やりたいことが見つからなくても、あなたは十分に価値がある|Calmee(カーミー)
「やりたいことは何ですか?」
この質問に、あなたはどう答えるでしょうか。
明確に答えられる人もいるかもしれません。でも多くの方は、少し言葉に詰まってしまうのではないでしょうか。
SNSを開けば、「好きを仕事に」「情熱を持って働く」そんな眩しい言葉が次々と目に飛び込んできます。やりたいことを見つけて、それを仕事にして輝いている人たち。その姿に触れるたび、心のどこかで小さなため息をついてしまう。
「私には、そんな明確な『やりたいこと』がない」
「みんなは見つけているのに、なぜ自分だけ…」
でも、本当にそうでしょうか。

やりたいことがわからないのは、成熟の証
30代後半、あるいは40代に入って「やりたいことがわからない」と感じている方の多くは、実は若い頃よりもずっと深く、自分自身について考えられるようになっています。
20代の頃、私たちはもっと簡単に「これがやりたい!」と言えたかもしれません。憧れの職業、華やかに見える仕事、社会的に評価される肩書き。そうした外側から見た「やりたいこと」なら、きっと言葉にできたはずです。
けれど今、あなたが簡単に「これだ!」と言えないのは、人生経験を積んだからこそ。表面的な憧れだけでは満足できないことを、体で知っているからこそ。
それは迷いではなく、成熟なのです。
桜の花が咲くまでには、長い冬の静寂が必要です。土の中で根を張り、幹の中で樹液を静かに巡らせ、芽吹きの時を待つ。その時間がなければ、美しい花は咲きません。
あなたの中で今、何かが静かに育っているのだとしたら————
それは焦って掘り起こすべきものではなく、そっと見守るべきものなのかもしれません。
「やりたいこと」至上主義という見えないプレッシャー
「好きを仕事に」「やりたいことで稼ぐ」「情熱を持って働く」
こうした言葉に、私たちは日々、囲まれています。
そしていつの間にか、「やりたいことがある人生」こそが正しく、「やりたいことがわからない人生」は不完全だと、どこかで思い込んでしまっているのではないでしょうか。
でも、すべての人に情熱的な「やりたいこと」が必要なのでしょうか。
「好きを仕事に」できたとしても、その仕事が嫌になる日は来るかもしれません。情熱を注いでいたはずのことが、義務になってしまう瞬間もあるでしょう。好きな仕事をしている人が、必ずしも幸せだとは限らない————そんな現実も、確かに存在します。
食べていくために働く。家族を支えるために働く。それもまた、素晴らしいことです。そもそも職業に上下などなく、懸命に働く姿はどんな職種であっても尊く、社会に必要とされています。
仕事は生活の糧であり、やりたいことは別の場所にあってもいい。週末の趣味に情熱を注ぐのも、家族との時間に喜びを見出すのも、静かな日常の中に幸せを感じるのも、どれも素晴らしい人生の形です。
「やりたいこと」がなくても、充実した人生は送れます。
むしろ、壮大な夢や明確な目標がなくても、日々を丁寧に生きている人の方が、心穏やかで幸せそうに見えることも、少なくありません。
私たちは、働くために生きているわけではないのですから。

あるクライアントのことを思い出します
30代女性のBさん(仮名)のことを、今でも鮮明に覚えています。
初めてお会いした時、Bさんは疲れ果てたような表情をされていました。
「もう何年も『やりたいこと』を探し続けているんです。自己分析の本も読んだし、診断ツールも試した。でも、何も見つからなくて。私には情熱を持てるものが何もないんでしょうか」
そう言うBさんの声には、自分を責めるような響きがありました。
私は、Bさんに「やりたいことを見つけましょう」とは言いませんでした。
代わりに、こう尋ねました。
「これまでの仕事で、『もうこれは嫌だ』『二度とやりたくない』と思ったことは何ですか?」
Bさんは少し驚いた様子でしたが、しばらくして、ぽつりぽつりと話し始めました。
長時間の通勤。毎日終電まで残る働き方。数字だけで評価される環境。自分の意見が全く通らない組織。人前で話すことを強要されるプレッシャー。
「やりたくないこと」なら、Bさんはすぐに言葉にできたのです。
それから数ヶ月、私たちは「やりたいこと」を探すのではなく、「やりたくないこと」を一つひとつ削ぎ落としていきました。
そうして残ったもの。消去法で見えてきた道。
それは、Bさんが思い描いていた華やかな「天職」ではありませんでした。でも、「まあまあ納得できる」「そこそこ心地よい」毎日を送れる環境でした。
半年後、Bさんはこう言いました。
「不思議ですね。壮大な夢を見つけたわけじゃないのに、毎日が前より軽いんです。これでよかったんだって、初めて思えました」
その瞬間の、Bさんの穏やかな表情を、私は今でも忘れることができません。
やりたくないことを削ぎ落とすという選択
「やりたいことリスト」を作るのは難しい。
でも「やりたくないことリスト」なら、案外すぐに書けるのではないでしょうか。
これは、ネガティブな思考ではありません。自分を知るための、とても大切な手がかりです。
「これは嫌だ」という感覚は、あなたの本当の価値観を教えてくれます。過去に傷ついた経験、違和感を覚えた瞬間、心が拒否反応を示した出来事。それらはすべて、あなたらしく生きるためのヒントなのです。
たとえば————
長時間通勤はしたくない → 在宅勤務や職住近接という選択肢
過度なノルマは嫌だ → 営業職以外の道を探す
人前で話すのは苦手 → プレゼン重視ではない環境を選ぶ
毎日同じことの繰り返しは辛い → ルーティンワークを避ける
こうして一つひとつ削ぎ落としていくと、自然と選択肢は狭まっていきます。そして不思議なことに、選択肢が狭まった方が、かえって決断しやすくなるのです。
無限にある可能性の中から「これ」を選ぶのは難しい。でも、「これとこれは違う」と分かっていれば、残った道はずっと見えやすくなります。

「納得できる日常」こそが、本当の答え
情熱的な夢。壮大な目標。明確なビジョン。
そうしたものがなくても、人生は十分に豊かになれます。
大切なのは、毎日を「まあまあ納得」「そこそこ心地よい」と感じられることではないでしょうか。
これは、自分軸を持つということです。誰かと比べるのではなく、自分自身が心地よいと感じられるか。SNSで見かける華やかな人生ではなく、自分にとっての「ちょうどいい」を見つけること。
若い頃のように、大きな夢を追いかけることだけが正解ではありません。大人になった今だからこそ、小さな幸せを大切にする生き方、人と比べない自分らしさの確立が、キャリアにも私生活にも必要になってきます。
朝、目覚めた時に「今日も頑張ろう」と思える。夜、眠りにつく時に「今日も悪くなかった」と思える。そんな小さな満足の積み重ねこそが、人生の方向性を作っていくのだと、私は信じています。
「やりたいこと」は、見つけるものではなく、気づいたら「これだったのか」と分かるもの。
まるで、湖面に映る月のように。
探そうとして水面をかき回せば、月の姿は乱れて見えなくなります。でも、水面が静かに落ち着いた時、月は自然とそこに映し出されるのです。
あなたの「やりたいこと」も、きっと同じです。
急がなくても、焦らなくても、心が静かに落ち着いた時、自然と見えてくるものがあるはずです。
あなたの中で静かに育っているもの
このコラムを読んでくださっているあなたの中にも、きっと静かに育っているものがあるはずです。
それは、まだ言葉にならない漠然とした違和感かもしれません。心のどこかで感じている「もっと別の生き方があるのではないか」という予感かもしれません。あるいは、「このままではいけない」という静かな焦りかもしれません。
どれも、とても大切なものです。
そして、それらはあなた自身のペースで育っていくものです。
急がなくてもいい。焦らなくてもいい。周りの声に惑わされる必要もありません。
SNSで見かける「成功した人たち」の姿に、心を乱される必要もありません。あなたの人生は、あなただけのものなのですから。

Calmeeができること
Calmeeでは、「やりたいことを見つける」ことを目標にしていません。
それよりも、あなたが「納得できる日常」を手に入れることを、一緒に考えさせていただいています。
やりたくないことを削ぎ落とすサポート。小さな満足を積み重ねるキャリア設計。心が静かに落ち着くまで、じっくりと待つ時間。
仕事だけでなく、人生全体を見つめるキャリア相談だからこそ、できることがあると信じています。
答えを急かさない。型にはめない。あなたのペースで、あなたらしく。
そんなキャリアコーチングの空間を、Calmeeでは大切にしています。
最後に
「やりたいことがわからない」
その言葉の裏には、きっと深い思考と、繊細な感性が隠れています。
簡単に「これだ!」と言えないのは、あなたが浅はかではないから。人生を深く考えられるようになったから。本当に大切なものを見極めようとしているから。
だから、どうか自分を責めないでください。
あなたは十分に価値があります。「やりたいこと」がなくても、あなたの人生は十分に美しいのです。
あなたの中で静かに育っているものを、私も一緒に見守らせていただければと思います。
その芽吹きの瞬間まで、ずっと。
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Calmee(カーミー)について:
心を整えることから始まるキャリアコーチングサービスです。転職やモヤモヤの整理、自分らしい働き方について、一緒に考えさせていただきます。やりたいことがわからない方のキャリア相談も、じっくりとお話を伺います。
詳しくは https://calmee.jpをご覧ください。
日々、役に立つ情報や心が少し軽くなるような投稿を公式X(旧Twitter)でもお届けしています: https://x.com/calmee_official